東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1095号 判決 1966年5月17日
横浜市西区平沼町三丁目一二七番地
控訴人
日本勧業相互株式会社破産管財人
菅原道彦
右訴訟代理人弁護士
永田喜与志
右訴訟代理人弁護士
清水沖次郎
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地
被控訴人
国
右代表者法務大臣
石井光次郎
右指定代理人検事
山田二郎
同
法務事務官 望月正
同
国税訟務官 三輪正雄
同
大蔵事務官 井上都
右当事者間の昭和四〇年(ネ)利得返還請求控訴事件につき当裁判所は次の通り判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金二、〇三七万三、七六〇円及びこれに対する昭和三二年一二月一五日以降支払済みに至るまで年五分の金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、法律上の意見及び証拠関係は、次に付加するほか。原判決事実摘示の通りであるから、これをここに引用する。
控訴代理人は、
原判決に摘示された控訴人の請求原因第三項記載の左記金額、
<省略>
右の金額は、本件徴収決定(請求原因第二項記載の徴収決定)の課税対象となつた利息名義の金員のほかに、破産会社が昭和二八年八月から同年一〇月までの間に株主との利殖契約に基き利息名義で支払つた金員に関するもので、この金員についても、当時の神奈川税務署長から所得税法号九条第一項第一号の預金利子に該るものとされ、「延滞すれば利子税、延滞加算税がつくから一応納付しておいたらどうか」と言われたので、その言に従い破産管財人須々木平次において自発的に納付したものである。
と補足し、
被控訴代理人は右主張事実を不知と答えた。
理由
当裁判所も控訴人の請求を失当と認めるものであつて、その理由は、左に付加するほか、原判決理由に説示する通りであるから、これをここに引用する。
本件徴収決定の課税対象となつた利息名義の金員のほかに、破産会社が昭和二八年八月から同年一〇月までの間に株主との利殖契約に基き利息名義で支払つた金員につき
昭和二八年九月一七日 本税金 二五〇、六三七円、利子税 七〇〇円
同年一〇月八日 本税金 二一九、六八五円、
同年一一月一〇日 本税金 三四四、三八一円、
を納付したか否かについては争いがあるけれども、それはともかくとして、破産会社が株主との間の利殖契約に基き利息名義で支払つた金員は、これを所得税法第九条第一項第一号所定の預金の利子と解すべきものであることは、さきに引用した原判決理由に説示する通りであるから、これについて破産会社が所定の税額を納付する義務のあることは明らかである。従つてこれと反対の前提に立ち、前期納付額を国の不当利得としてその返還を請求する控訴人の請求は理由がない。
よつて控訴人の本件控訴は理由がないものとして、民事訴訟法第三八四条第九五条第八九条に則り主文の通り判決した。
(裁判長判事 岸上康夫 判事 小野沢竜雄 判事 室伏壮一郎)